リウィウスを読もう!

ティトゥス・リウィウスの「ローマ建国以来の歴史」、
完全日本語訳がまだされていないこの史料を読もうという試みです。
自己中心的なことに、スタートは21巻からです。いつになることやら分からないけれど、エンドは30巻です。
要するに、第二次ポエニ戦争限定です。

*はじめてお越しの方は、「はじめに」をご覧ください。
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21-22
スペインの防備に次弟ハシュドゥルバルを残す。
ハンニバル、ついに遠征を開始する。
エブロ川の岸で、ハンニバルの夢に神の使者が現れる。
 スペインの防備も忘れてはならなかった。ハンニバルはローマの使節が各地を旅して首領の友好を勝ち得ようとしている動き(*1)を知っていた。
 そこでハンニバルはスペインの防備を、峻烈で才気あふれる弟のハシュドゥルバルに任せることにした。委ねた軍は、リビア歩兵11850人、リグリア人歩兵300人、バレアレス人歩兵(*2)500人から成る強力な軍団だった。これら歩兵には更に騎兵が加わっている。リビア・フェニキア人(リビア人とフェニキア人の混血)450騎、ヌミディア人とムーア人(地中海沿岸に住まう者)が1800騎、スペインのイレルゲテス人300騎。この上、21頭の戦象も加わった。
 沿岸の防備には艦隊が必要だった。第一次ポエニ戦争ではローマは海戦で勝利を掴むことができたため、今度も海戦に訴えてくる可能性は十分にあった。ハシュドゥルバルはこれに備えて、57隻の戦艦を与えられた。五段櫂船50隻、四段櫂船(*3)2隻、三段櫂船5隻がその内訳だった。しかし、この艦隊の中で実用に耐えうるものは、五段櫂船のうち32隻と、5隻すべての三段櫂船のみだった。
 
 ハンニバルはガデスから冬営地カルタゴノヴァに戻った。そしてこのカルタゴノヴァから、ついにイタリアへ向けて進軍したのだった。
 Onusa(Etovissa)の町を通過したハンニバルは、エブロ川流域にたどり着いた。ここでとある物語がある。眠っていた彼は夢を見た。夢の中では一人の若者が彼の眼前に現れた。神々しい容貌を持つ若者だった。
 「私はユピテル神によってお前の元に遣わされてきた。ハンニバル、お前をイタリアまで導くのが私の役目だ。さあハンニバル、我が後をついてこい。お前の目は私の背に注ぎ、決してそこから逸らしてならない」
 ハンニバルは神の使者の仰せに従って、彼の跡を追った。当初は神に対する畏敬の念に満ち満ちて、決して目をそらすことはなかった。だが次第に好奇心が増し、いったい後ろで何が起こっているのだろうと思い始めた。ついに誘惑に抗しきれずに後ろを振り向いてみると、そこに彼は見た。巨大な蛇がその身をくねらせ、その前にあるものすべてを打ち倒しながら進むのを。そしてそれを彩るかのように、雷鳴が轟きわたっているのを。
 「神の御遣いよ、これはいったい何の前兆だ?」
 神の使いは、ハンニバルの問いに答えた。
 「この荒廃が未来のイタリアの姿だ。さあ進め、前へ。もはや何も問うな。お前の運命は、いまだ定まってはいない」
| livy | 21巻 | 17:41 | comments(4) | - | - | -
(*1)この直前、21-19・20で述べられていることだと思う。ローマ人使節がスペイン〜ガリアを旅し彼らの友誼を得ようとしたものの、失敗に終わったこと。ハンニバルは結果も当然知ってはいただろうけれど、ガリア人が生来移り気だということも知っていた。万一の事態に備えて手を打つことにしたのだと思う。
| ニワセ | 2006/01/31 6:27 PM |

(*2)バレアレス兵は投石兵が有名ですが、歩兵もいたんですね…。
| ニワセ | 2006/01/31 6:28 PM |

(*3)四段櫂船っていうのもあったのか…。五段と三段しか知りませんでした。
| ニワセ | 2006/01/31 6:28 PM |

(*4)後にハンニバルを打ち倒すことになるスキピオは、幼い頃からユピテル神殿と縁があり、神の子であるとウワサされたこともあったそうです。この二人の英雄の数奇な運命に際して、ユピテルの力が等しく分け与えられたことが暗示されているのかもしれない…と思いました。
| ニワセ | 2006/01/31 6:29 PM |










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