リウィウスを読もう!

ティトゥス・リウィウスの「ローマ建国以来の歴史」、
完全日本語訳がまだされていないこの史料を読もうという試みです。
自己中心的なことに、スタートは21巻からです。いつになることやら分からないけれど、エンドは30巻です。
要するに、第二次ポエニ戦争限定です。

*はじめてお越しの方は、「はじめに」をご覧ください。
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21-10
ローマの使節団、カルタゴ到着。
ハンノのだけが反ハンニバルの立場をとった。
「ハンニバルを引き渡し、条約違反に対する謝罪をローマに対して行うべきだ」
 結果的にこの使節の随行は失敗に終わった。カルタゴ議会のほぼすべてがローマに対して否定的で、ただハンノだけが条約の遵守に好意を見せた。カルタゴ議員たちはハンノの意見に賛成だったわけではないが、ハンノの権威を尊重して、その演説を黙って聴いていた。条約をつかさどる証人たるべき神々の名において、サグントゥムとの戦いをローマとの戦いにつなげるべきではないと演説した。
 「諸君らに告ぐ。ハミルカルの息子に増援を送るものではない。バルカの名前を冠し、その血に列なるものが一人でも残っている限り、ハミルカルの精神は決して死にはしないし、ローマとの条約が安泰であることは決してないだろう。援軍を送ることは、まさに火に油を注ぐようなものだ。諸君らが油を注いだこの若き炎は、主権を欲して燃え盛っている。その炎を維持するためには、間断なき戦い、大軍に次ぐ大軍が必要であることを、この若者はよく知っている。その火の粉はいつの日か、諸君らの上にも降り注ぐことだろう。
 諸君らの軍が派遣されたサグントゥムは、条約により立ち入りが禁止されているはずだ。やがてローマの軍隊が今度はカルタゴ本国にやってきて、神々の名のもとに、和平条約に違反した制裁をせんとすることだろう。諸君は敵を知らないのか。いや、諸君自身のことも分かってはいまい。双方の国を待ち受ける運命についても考えてみよ。
 あの若者は、盟邦ローマの使節が陣営に入るのを拒み、国家の法を無効化した。敵の使節でさえも立ち入りを許されるところであるのに、ハンニバルはそれを許さず、その使節が今度はカルタゴにやってきた。彼らは条約違反の賠償を求めている。彼らが望んでいるのは事を起こした張本人ハンニバルの引渡しであり、我々に罪をかぶせようとしているわけではない。彼らが行動を起こすのが遅れれば遅れるほど、いざ開戦ともなれば、断固たる決意を持って戦いに固執するのではないかと私は恐れているのだ。AegatesやEryxを思い出し諸君が24年にわたって陸海共に蒙った苦難を思い起こして見るとよい。あの若者はその時軍を率いてはいなかったが、かの父親ハミルカルが軍を率いて戦い、軍神の生まれ変わりのごとくに称えられた。条約によれば我々はタレントゥム、つまりイタリアに干渉しても許されるが、いまや我々は条約を無視してサグントゥムに干渉してしまったのだ。
 神々とローマの人々は、我々を許してはおかないだろう。議論の主題はつまり、どちらの国が条約を破ったかということである。天秤が公正であるように、正しい側にこそ勝利が与えられるはずだ。今、ハンニバルが攻城兵器を設置し、打ち破らんとしている城壁は、カルタゴのものなのだ。万が一サグントゥムが破壊されてしまったとすれば、その瓦礫を蒙るのは我々に他ならない。そしてサグントゥムとの間に始まった戦いを皮切りに、戦いは、今度はローマを相手として発展していくことだろう。
 『ハンニバルを引き渡すべきだろうか?』、その問いに対して私はこう思う。あの若者には私の忠告など意味をなさない。私の見解は、彼の父ハミルカルのそれとあまりに違いすぎる。そのハミルカルだが、私は今このとき、彼がこの世に生きてはいないことに安堵を覚えている。もしも彼がまだ存命であれば、すでにローマとは交戦状態に陥っていたことだろう。戦いに火をつけた業火のごときこの若者に対して私が抱くのは嫌悪以外の何物でもない。私の見解としては、彼をこの条約違反として引き渡すだけでは物足りない。はるか遠い大地の彼方へと追放するべきだ。どこか、誰の便りも届かないところへ、誰も彼の名前を聞いたこともないところへ、我々カルタゴの安全を脅かすこともできないところへ。それが私の意見だ。
 使節団を組んでローマに派遣し、彼らの要求に従う姿勢を見せるべきだ。続いてハンニバルにもサグントゥムから手を引くように伝え、その身柄をローマへと引き渡す。それから再びサグントゥムへ使節を派遣して、ハンニバルによって蒙った被害を補償せねばなるまい」
| livy | 21巻 | 16:36 | comments(1) | - | - | -
カルタゴ本国における反バルカ一門急先鋒のハンノ。「ハンノ」という名前はカルタゴに良くある名前なのか、他のハンノも多く出てくる。
このハンノはハミルカル〜ハンニバルの政敵として重要なポジションにある人物。
| ニワセ | 2006/01/19 5:04 PM |










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