リウィウスを読もう!

ティトゥス・リウィウスの「ローマ建国以来の歴史」、
完全日本語訳がまだされていないこの史料を読もうという試みです。
自己中心的なことに、スタートは21巻からです。いつになることやら分からないけれど、エンドは30巻です。
要するに、第二次ポエニ戦争限定です。

*はじめてお越しの方は、「はじめに」をご覧ください。
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21-5
ハンニバル、将軍として初の軍事行動。
Olcades族、Vaccaei族、Carpetani族との戦い。エブロ川以南の制圧。
 総司令官となったその日から、ハンニバルはイタリアに攻め込んでローマと戦うことこそ自らの使命と考えていたようだ。遅れは許されない、父やハシュドゥルバルのときのように予測しなかったことで足止めを食らうわけにはいかない。後顧の憂いは絶っておかねばならぬと考えて、サグントゥム攻撃に踏み切った。
 しかしサグントゥムを攻撃すれば、必然的にローマは戦闘態勢となる。ハンニバルは手始めに辺境の民族でいまだカルタゴの傘下には入っていないOlcades族を攻撃した。ハンニバルとしては、これは己の真の目的を覆い隠すための手段だった。すなわち、サグントゥムが直接の目標ではないように装ったのだ。周囲からじわじわと圧力をかけて、サグントゥムとの戦闘状態が避けられないような状況を、彼自身で作り出した。
 
 Olcades族の首都であり富める都市カターラは電撃的に襲撃され、瞬く間に略奪の憂き目を見た。カターラと同じ運命が待ち受けていると恐れおののくそのほかの町に対しては、制圧して後に戦時賠償金を課した。
 勝利を挙げた軍は戦利品で潤って、冬越しのためにカルタゴノヴァに戻った。カルタゴノヴァにて、ハンニバルは戦利品を均等に分配し、負債はきちんと期限を守って支払ったので、カルタゴノヴァの人々や盟邦はハンニバルへの支持を失わなかった。
 
 次の年の春が訪れる頃、ハンニバルはさっそく軍事行動をはじめた。Vaccaei族の領土に進軍し、その都市のうちの二つ、ArbocalaとHermandicaを急襲して陥落させた。Arbocalaは守備隊も多く、彼らの勇猛さでしばらくは耐えていた。
 Hermandica急襲の際に逃げ延びることができたものが、昨年のOlcadesの残党と結託して、Carpetani族を扇動して戦争に巻き込んだ。タグス川からそう遠くないところで、Vaccaei族との戦闘から帰還中だったハンニバル軍を発見、残党たちは襲い掛かった。戦利品でいっぱいだった軍は動作が遅く、恐慌に陥った。
 ハンニバルは戦うのは無理だと判断し、兵士をしっかりと集めて川岸に陣営を設営した。敵軍はやがて静かになる。それを見たハンニバルは、今度はこちらから、川の浅瀬を歩いて渡った。設営した塹壕は敵が越えるのに十分な余地をあけてあった。それは、敵が川を渡っている間に攻撃をしかけるためだ。ハンニバルは自軍の騎兵たちに指示を出して、敵軍が川に入るまで待たせた。そして、それを見届けるとたちまち攻撃にうつったのだ。さらに、40頭の戦象を川岸に配備しておいた。
 Carpetani族はOlcadesとVaccaei族の残党を合わせて、総計10万の兵力となっていた。平原で真っ向からぶつかれば、打ち破ることが難しい敵となっている。それは敵軍には、数で勝っているという過信を植えつけた。生来、恐れを知らない民族である。ハンニバル軍が後退して行くのは恐れをなしたためだと誤解したのだ。彼らにとって、すべては勝利の兆しに思えたことだろう。ハンニバル軍と自軍を隔てる川だけが、勝利への障害物のように思えた。
 攻撃の命令も下されないままに、スペイン人たちは咆哮をあげて我先にと川を渡った。反対側で待ち受けていたハンニバル軍の騎兵たちも川へと突入する。二軍は川の真っ只中でぶつかりあった。戦いは、互角には程遠かった。歩兵たちは、歩いて渡れるところであっても足元がおぼつかなく感じ、武装をしていない騎兵でも容易に追いつくことが出来た。一方騎兵は、流れの最中でも馬はしっかりと足を踏ん張っているおかげで、武器を握る手は自由に動かすことが出来た。敵兵の大多数は川に流されてしまい、ハンニバル軍側に流れ着くことができた者も待ち受ける象に踏み殺された。後衛にいた者はあわてて後退し始めた。それが生き残る唯一の道だと思って、恐れが命じるままに身を寄せ合って一丸となろうとした。だが敵軍が闘志を取り戻す前に、ハンニバル自ら歩兵を率いて川に飛び込んで、残党を掃討にかかった。さらに敵軍の領土を荒らしまわって勝利を確かなものにした。
 その結果、数日足らずでカルペタニ族は降伏した。
 今や、エブロ川の南側でハンニバルに臣従しない国はなかった。ただ一つ、サグントゥムを除いて。
| livy | 21巻 | 18:06 | comments(2) | - | - | -
イベリア人の部族名がいろいろ出てきて、ちょっと混乱します。地図がほしいところ…。
| ニワセ | 2006/01/12 6:29 PM |

ハシュドゥルバルが没して、ハンニバルが権限を引き継いだのが、BC221年。ハンニバル、26歳の頃。
『次の年の春』以降が、翌年、BC220年。ハンニバル、27歳の頃。
| ニワセ | 2006/01/12 7:23 PM |










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