リウィウスを読もう!

ティトゥス・リウィウスの「ローマ建国以来の歴史」、
完全日本語訳がまだされていないこの史料を読もうという試みです。
自己中心的なことに、スタートは21巻からです。いつになることやら分からないけれど、エンドは30巻です。
要するに、第二次ポエニ戦争限定です。

*はじめてお越しの方は、「はじめに」をご覧ください。
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21-4
ハンニバル、兵士の心を掴む。ハンニバルの人柄についての総括
 議会の有力者の多くがハンノに賛同した。
 一方ハンニバルはスペインに上陸するや否や、瞬く間に兵士の心を掴んだ。古参の兵士たちは、ハミルカルが若返って彼らの元に還ってきたような気がした。瞳の鋭さ、意志の強そうな表情、一見したときに受ける印象が、父親に生き写しだった。
 だがハンニバルはすぐに父親の幻影に頼ることなく、彼自身が兵士の信頼を得るに足ることを証明して見せた。
 人を従わせることと、人に従うこと。相反するこの能力が彼の内において見事なまでの調和を見せていた。彼の部下も、彼の上官も、等しく彼に信頼をおいていた。上官であるハシュドゥルバルは、他のどの部下よりもハンニバルを信頼していた。兵士たちも、ほかのどの将の元よりもハンニバルの指揮下で、自信をもって能力を最大限に発揮することが出来た。
 危険をおそれることなく、危機に瀕しても冷静さを失うことがなかった。暑さも寒さも厭うことがなく、飲み食いは必要な分だけ行った。夜に決まって眠るわけではなく、昼でも夜でも軍務の手が少し開いた時にだけ休息と睡眠をとった。けれどその休息にもやわらかな寝床や静けさを求めず、歩哨が巡回しているような道端に外套をまきつけただけで休んでいる姿を兵士たちはよく見かけた。服装は彼の年ごろからいって標準的なものだったが、武具と馬は一級品を使っていた。
 一兵士としても優れた能力を有しており、騎兵としても歩兵としても一級だった。誰よりも先に戦闘に突入していき、誰よりも遅くに戦闘から離脱した。
 
 こういった長所と同時に、彼はおそるべき悪徳も備えていた。
 人とは思えないほどの残虐さ、普通のカルタゴ人以上の不誠実(*1)、真実のかけらも持ち合わせておらず、神を信じず、誓いを軽視し、宗教心などその心には宿ってもいなかった。
 
 指揮官としてのこれ以上ないほどの美徳と、人間としてこれ以上ないほどの悪徳、それを併せ持つのがハンニバルという人間だった。
 ハシュドゥルバルの元で軍務に従事していた三年という間、ハンニバルはいつか偉大な将軍となるために必要な経験を積んだ。機会があればただちに実務に飛び込み、そうできないときでもつぶさに観察することは怠らなかった。
| livy | 21巻 | 10:48 | comments(3) | - | - | -
(*1)ローマ人のカルタゴ人に対するイメージは「不実」。『ただでさえカルタゴ人は信義に悖るのにこのハンニバルはそれ以上だ』みたいな意味らしい。
| ニワセ | 2006/01/12 11:56 AM |

「神を信じず、誓いを軽視し」と書いてあるけれど、これはローマ人的なハンニバルに対する悪印象によるものだと思う。ハンニバルがマケドニア王フィリッポスとかわした条約文書(ポリヴィウスに引用されている)は彼自身が記したものだといわれているけれど、条約を有効化するために神への誓約が述べられている。また、そもそものはじまりに、父ハミルカルに連れられてカルタゴの神殿で「生涯ローマを敵とする」という誓いをたてている。ハンニバルは死の直前まで、この言葉どおりにローマの敵であり続けたわけだから、この時代の人間として平均的以上に神に対しては忠実であったように思える。
| ニワセ | 2006/01/12 12:09 PM |

ハンニバルはいったいどこにいたんだろう…。「スペインに上陸した」とあるけれど、スペインにいたんじゃなかったんだろうか。実はカルタゴとスペインを行ったり来たりしていたんだろうか?
| ニワセ | 2006/01/12 6:06 PM |










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