リウィウスを読もう!

ティトゥス・リウィウスの「ローマ建国以来の歴史」、
完全日本語訳がまだされていないこの史料を読もうという試みです。
自己中心的なことに、スタートは21巻からです。いつになることやら分からないけれど、エンドは30巻です。
要するに、第二次ポエニ戦争限定です。

*はじめてお越しの方は、「はじめに」をご覧ください。
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22-15
意志を曲げないファビウス。
ハンニバル、戦いをあきらめて冬営地を探すためにこの地を離れることにする。
ファビウス、ハンニバル離脱の動きを掴み、斥候を出す。
斥候・ホスティリウスはミヌキウス派で、敵の姿を捉えると交戦。戦死に至った。
別行動中だったミヌキウス、ファビウスと合流し、ハンニバル進軍路のおさえにかかる。
 ファビウスは敵に気を配るのと同時に、味方についても注意は怠っていなかった。味方の動向を知っていても、彼は動じない。自分のやり方が味方の賛同を得ていないことはわかっていた。自軍のうちのみならず、いまやローマにおいてもファビウスへの不評は高まっている。それでもファビウスは決して譲らず、その夏の間中、持久戦法でハンニバルを付けねらっていた。
 
 ハンニバルのほうでも、どれほど戦いを仕掛けようが決して応じないことを知り、戦いへの望みをあきらめざるを得なかった。すでに季節は移りつつあり、冬をすごす場所を定めるほうが先決だ。今ハンニバルがいる土地に実るのは果実や葡萄といった、いわば嗜好品の類。生きるのに必要なものではない。そしてハンニバルが抱える食料では数ヶ月を過ごすのが精一杯で、年を越すのは難しい。

 このハンニバルの動きをローマ軍の斥候がとらえ、ファビウスに報じた。この地を去ろうというのであれば、入ってきたのと同じ道を通ることは疑いない。ファビウスはカリクラ峠(*1)に選りすぐりの精鋭兵を配備する。また別の一隊はカシリヌムの守備を任せた。ウォルトゥルヌス川がこの町の真ん中を流れ、ファレルノとカンパニアの境目になっている。
 ファビウスは軍を率いて再び高所に戻り、ルキウス・ホスティリウス・マンキヌス(*2)に400の騎兵を与え、偵察に出していた。このホスティリウスは、ミヌキウスシンパの若者集団の一人だった。当初はホスティリウスも斥候にふさわしく警戒を怠らずに進みつつ、敵の様子がよく見える場所を求めていた。
 やがてホスティリウスは、ヌミディア騎兵が周囲を荒らしまわり、村人をその手にかけているのを目にする。その瞬間、彼の脳裏からはもはや戦うこと以外、すべてが失せた。敵に見つかる前に戻れというファビウスの指示すらも消し飛んだ。ヌミディア騎兵は小隊編成で攻撃と退却を繰り返しつつ、巧みにホスティリウスをハンニバル軍陣営付近まで導く。
 この頃には、ホスティリウス以下の騎兵はすっかり疲労のきわみ。そこへハンニバル軍の騎兵部隊司令官・カルターロ(*3)が猛進。ホスティリウス以下はまだハンニバル軍投槍部隊の攻撃範囲内に入る前にきびすを返して逃亡。カルターロは馬足を緩めぬまま、8キロあまり追走する。
 ホスティリウスはもはや逃げ切れぬと観念した。配下の騎兵を集め、ヌミディア騎兵と向き合った。数でも質でも、ヌミディア騎兵のほうが勝っている。ホスティリウスは勇敢な同僚と共に戦って死んだ。残りの者は闇雲に逃亡し、ひとまずカレス(*4)に逃げついて、そこから道なき道を通ってファビウスの元まで戻った。

 ちょうどこの日、別行動をしていたミヌキウスがファビウスと合流を果たした。ミヌキウスは別部隊の強化に行っていたのだ。この部隊は、タラッキナ(*4)の北で海と接する細い道の守備を担っていた。ここを押さえれば、ハンニバル軍はアッピア街道を使うことができない。シヌエッサからローマの領域に入られずに済むのだ。ファビウスとミヌキウスは軍勢を合わせて共に進軍し、ハンニバル軍進軍予測路の押さえにかかった。このときハンニバルは、わずか3キロ離れたところに宿営地を置いている。

 (*1)Callicula。カンパニアとサムニウム地方の境目にある峠。残念ながら正確な場所は分かっていないらしいです。ポリュビウスはこの具体的地名を出していません。ともかく、両側を高所に挟まれた難所の峠であるようです。
 
 (*2)Lucius Hostilius Mancinus。ファビウス軍の将校の一人。前後の文脈からするに、若かったのかな?
 
 (*3)Carthalo。もしくは、Karthalo。ハンニバル軍の騎兵司令官の一人。多分カルタゴの貴族出身で、この後も同名の人が出てきます。おそらく同一人物かな…?
 
 (*4)Cales。カシリヌムの近くにあるカンパニアの町。

 (*5)Tarracina。ラティウム地方の海岸町。アッピア街道沿いにある。
| livy | 22巻 | 20:26 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -









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