リウィウスを読もう!

ティトゥス・リウィウスの「ローマ建国以来の歴史」、
完全日本語訳がまだされていないこの史料を読もうという試みです。
自己中心的なことに、スタートは21巻からです。いつになることやら分からないけれど、エンドは30巻です。
要するに、第二次ポエニ戦争限定です。

*はじめてお越しの方は、「はじめに」をご覧ください。
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22-14
ハンニバル、ファビウス、両軍カンパニアに入る。
ハンニバル、カンパニアを略奪。
ミヌキウス、怒りの演説。積極戦法を訴える。
 ハンニバル軍は宿営地をウォルトゥルヌス河畔(*1)に立てた。この軍勢の手により、イタリアの最も美しい土地が灰と化し、農家の建物も焼かれて煙をくすぶらせている。
 
 ファビウスは軍を率いてマッシクスの丘陵(*2)に沿って進軍を続けていた。カンパニアを略奪から救うために行軍速度は速まり、このため内輪もめはしばらく沈静化していた。
 だが、同地に足を踏み入れた彼らの目にうつったのは、燃え盛るシヌエッサ(*3)の農地と荒廃したファレルノの地。それでもファビウスからは開戦の言葉もない。
 
 ミヌキウスはとうとう叫んだ。
 「俺たちがここに来たのは友邦が虐げられるのを見るためか!? 燃える農地を見世物に楽しめとでもいうのか!
 この地シヌエッサは我らの父祖がサムニウム人との戦いから国境を守るために植民した土地、今やこのシヌエッサは我らの隣人サムニウム人の手でもなく、世界の果てからやってきたカルタゴ人の手で燃え落とされている。俺たちがぐずぐずして、何もしていなかったからだ!
 これを恥と思わないのなら、いったい何が恥だ! これで父祖たちに顔向けができると思うのか! 見よ、イタリアの沿岸はヌミディア人とアフリカ人がひしめいている。父祖たちはこの近海をカルタゴ船が行きかうのも恥辱と思っていたんだぞ。それに引き換え俺たちのなんと堕落したことか!
 我々自身だって、サグントゥムの侵攻に怒りを覚えたのもそれほど前のことではあるまい(*4)。それが今、その怒りはどこへやら、ハンニバルが我らの植民市に攻城兵器をかけんとするのを指をくわえてみているだけか! 焼け落ちる家屋の煙が、燃え盛る畑の灰が、我らの顔に吹き付けてきているのに! 助けを求める人々の嘆きが我らの耳に届いてきているのに! 彼らは神々よりも我らに助けを求めているんだぞ。それなのに俺たちはまるで家畜の群れみたいに、視界を木々と雲に遮られたまま夏草の生い茂る山道をただ歩いているだけだ!
 かつてのマルクス・フリウス・カミルス(*5)がもしもこんな方法をとったんなら、ローマは今頃ガリア人のものになっていただろう。今こんなところでぐずぐずしていたら、父祖たちはいったい何のために祖国を守ってきたんだ? これじゃまるで、ハンニバルに譲り渡すために守ってきたようなものだ!
 そのカミルスは、ウェイイに伝令がやってきてガリア人どもの悪行を知り、元老院と市民の名の下に独裁官となった。就任のその日、ヤニクルムの丘は敵の動向を窺うには十分な高さがあったのに、カミルスは丘からかけ降りて町の只中に飛び込み、ガリア人を蹴散らした。ローマの男たるものこうでないといかん! しかもカミルスは翌日も続けて、ガビィ(*6)でもガリア人を打ち破った。
 それから、ルキウス・パピリウス・クルソル(*7)だ。サムニウム人との戦いで窮地に陥っていたが、彼がサムニウム山地に赴いてルケリアを包囲した結果、勝利は我らのものとなった。また、ガイウス・ルタティウス(*8)が勝利を手にしえたのは、その速攻以外に何がある? ルタティウスは、敵が積荷を多く積んで身動きが取れないことを知り、すばやい襲撃をかけた。
 ただぼーっとして天に祈るだけで勝利がつかめるのであれば誰も苦労しないさ。戦士たちよ、武器を取れ! 敵と対峙し、この手で戦おう! それが我らの義務ではないのか? ローマを堅固にするのは、石橋を叩いて渡らないような臆病者の策略ではないはずだ!」
 
 ミヌキウスは将校や騎士階級の前で熱弁を振るった。だが熱意の篭る彼の言葉は、一兵士たちにまで知るところとなる。兵士たちはもしも問われるのならば、ファビウスよりもミヌキウスを選んだだろう。


 (*1)Vulturnus。カンパニア地方を流れる川。源流はサムニウム地方にあり、Vulturnumでティレニア海に注ぐ。結構流れがキツイ川。ややこしいことに、この後カンネーで「Volturnus」というのが出てくる。こちらはこの地方特有の風。
 
 (*2)Massicus。カンパニア地方とラティウム地方の境界にある丘陵。シヌエッサ〜スエッサあたり。
 
 (*3)Sinuessa。ラティウム地方とカンパニア地方の境界あたりにある町。298年に植民された。
 
 (*4)ハンニバルのサグントゥム包囲に対してローマは抗議の使節を送っています。リウィウスを信じるのなら、二回も。21-621-9参照。
 
 (*5)Marcus Furius Camillus。ガリア人の侵攻からローマを守った英雄。22-03参照。

 (*6)Gabii。ラティウム地方の町。ロムルスとレムスが狼に育てられたという伝説の地であり、セクストゥス・タルクィニウスが没した地でもあるそうです。
 
 (*7)Lucius Papirius Cursor。サムニウム戦争の勝者。

 (*8)Gaius Lutatius Catulus。第一次ポエニ戦争の海戦で勝利を挙げた、平民出身の執政官。
| livy | 22巻 | 19:08 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -









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