リウィウスを読もう!

ティトゥス・リウィウスの「ローマ建国以来の歴史」、
完全日本語訳がまだされていないこの史料を読もうという試みです。
自己中心的なことに、スタートは21巻からです。いつになることやら分からないけれど、エンドは30巻です。
要するに、第二次ポエニ戦争限定です。

*はじめてお越しの方は、「はじめに」をご覧ください。
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22-12
ファビウス、進軍開始。
ハンニバル軍とファビウス軍、向き合う。
動じないファビウスに苛立つハンニバル。
ハンニバル、ファビウスの忍耐を試す。
ファビウス、小戦闘を繰り返してローマ兵の士気を回復させる。
騎兵長官ミヌキウス、ファビウスを腰抜け呼ばわりする。
 執政官の軍団はファビウス麾下のフルウィウス・フラックス(*1)が譲り受け、ファビウスに引き渡した。独裁官はこの軍団と共にサビーニ人の土地を縦断し、ティボリに到着。同日、新規召集された軍団もこの地に集う(*2)。ここからプラエネステ(*3)へ向かい、一旦街道から逸れて今度はラティーナ街道に出る。周囲の土地に与える被害を出来うる限り最小限にとどめよるため、街道の状況を緻密に調査しつつ、ついに敵に向けての行軍が開始された。
 
 やがてファビウスは敵をその至近に捕らえ、にらみ合うように宿営地をたてた。場所は、アルピ(*4)の近郊。ハンニバルはただちに軍を出して戦闘布陣をとり、攻撃の構えをとる。だが、ローマ軍には戦いの機運が窺えず、その宿営地も平穏そのもの。ハンニバルは嘲りの言葉を吐いた。
 「ローマ人よ、それでも軍神マルスの子か? 軍神の魂はここに潰えた。貴様らにはもはや勇気と名誉は窺えんぞ」
 そう言いつつも、ハンニバルの内面はいらだちに苛まれていた。今度眼前に立ちふさがっている将は、フラミニウスやセンプローニウスとは違う。ローマもこれまでの敗北を教訓とし、いかなる将であればハンニバルに対抗しうるかを編み出したのだ。すなわち、激情型の猛将ではなく、熟考型の智将を。
 
 だがファビウスの動じなさはハンニバルにとってまだ未確定要素が多かった。どこまでこの相手が耐えられるのか。それを試すため、ハンニバルは頻繁に陣をうつし、敵の眼前でローマに盟する土地を荒らしまわった。あるときは急行軍でファビウスの視界から姿をくらます。そうかと思えば行軍を停止し、まがりくねった道に伏兵を潜ませて、ファビウスが平地に降りてくるのを待ち受けようとしていた。ファビウスは高所に陣取り、ハンニバル軍を見失わず、かつ、接触しないような一定距離を保って移動していた。

 ローマ軍団は基本的に宿営地内に留まっており、必要にかられた際のみ陣から出ていた。森に踏み込んだり食料調達に出かけるときは、ある程度まとまった数で行動する。騎兵および軽装歩兵の部隊は常に急襲に対して警戒を怠らなかった。これは味方の安全を守ると共に、食料をもとめて散開している敵には脅威をとなりうる。また、全軍が一度に危機に陥ることがなきように配慮していた。
 兵士は先の大敗北で士気が落ちており、まずはこれを回復せねばならない。ファビウスは、退路の確保された状況での小規模な戦闘を何度か繰り返した。これが効果を上げ、兵士の士気も徐々に回復する。自らの勇気と幸運を再び信じることが出来るようになった。
 
 だがファビウスのやり方に苛立ちをつのらせていたのは、ハンニバルだけではなかった。ほかならぬファビウス自身の騎兵長官であるミヌキウスが、むしろハンニバル以上に焦燥を感じていた。しかし、ミヌキウスはあくまでファビウスの下位に過ぎず、そのおかげで国家は突っ走って壊滅するという憂き目を見ずにすんだ。意志を曲げぬ激情家なミヌキウスは、歯に衣着せぬ言い方でファビウスをあげつらった。最初は内輪だけで言っていたのが次第におおっぴらになっていく。
 「あいつは我慢強いんじゃない。ただ、のろまなだけだ。注意深い? とんでもない! やっこさん、意気地なしなだけさ」
 ミヌキウスはファビウスの持つ徳目を悪徳とし、上官たるファビウスを貶めて自らの権威を高めようとしていた。
 

 (*1)Fulvius Flaccus。詳しいことは不明。215年の法務官でQuintus Fulvius Flaccusという人がいますが、この人かなあ……。
 
 (*2)22-11でファビウスが新兵にはこの地に集うよう命令を出していました。
 
 (*3)Praeneste。22-01参照。現パレストリーナ。
 
 (*4)Arpi。22-09参照。トランジメーノから南に向かったハンニバルがこのあたりにいました。
 
| livy | 22巻 | 17:39 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -









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