リウィウスを読もう!

ティトゥス・リウィウスの「ローマ建国以来の歴史」、
完全日本語訳がまだされていないこの史料を読もうという試みです。
自己中心的なことに、スタートは21巻からです。いつになることやら分からないけれど、エンドは30巻です。
要するに、第二次ポエニ戦争限定です。

*はじめてお越しの方は、「はじめに」をご覧ください。
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22-06
インスブルス族のデュカリウス、フラミニウスを討ち取る。
ローマ軍、潰走。
マハルバル、敗残兵を追撃する。
武装解除と引き換えに身の安全を保証するが、ハンニバルはこの協約を無効とし、投降者を捕虜とした。
 戦いは、3時間近く続いていた。
 どこもまだ激烈な様相を呈していたが、執政官フラミニウスの周りはひときわ苛烈だった。まわりを固める兵は選りすぐりの精鋭だったが、フラミニウス自身もまた勇猛の将。味方が押されて苦戦しているのを認めるとただちに救援に駆けつける。戦場を自在に駆けるフラミニウスが纏う鎧は、執政官にふさわしいひときわ優れたものだった。これが敵の目を引き、敵は「我こそ執政官を討ち取らん」と、こぞってフラミニウスに押し寄せてきた。執政官を守る護衛兵も果敢に応じる。だがここに一騎、その名はデュカリウス(*1)。インスブルス族(*2)の騎兵で、フラミニウスの顔も知っている因縁があった(*3)。
 「見つけたぞ、フラミニウス! こいつが俺の祖国を、俺の町をめちゃくちゃにしやがったんだ! 我が同朋の恨み、その身で贖え!!」
 デュカリウスは馬腹を蹴って矢のように駆け、まっすぐに敵陣に切り込んだ。一閃、まずは前に立ちはだかったフラミニウスの下僕の血で槍を染め、その槍まさに執政官に迫る。傍らのトリアリィが盾をかかげ、執政官の身を守りその場から連れ去ろうとする。
 これを機に、一斉に退却が始まった。湖も山もその足を止めることはできなかった。まるで視界を奪われた人のように、袋小路でも絶壁でも構わず逃げていく。取り落とされた武器は地に転がり、人もまた転がり落ちていく。あまりにも多くの人間が一斉に逃げ出したため、ひしめく人ごみで踏み出す隙間もない。やむなく湖の浅瀬に足を踏み出し、肩まで水に浸かるぐらいの水位まで進んだ。抑えきれぬ恐怖に押されるがままに泳いででも逃げようとする。だが対岸ははるかに遠く、これもまた望み薄い。深い水位ではたちまち泳ぐ気力も逸す。無駄に疲れ果てただけで岸辺にとって返そうとするも、戻りは困難。岸辺には敵騎兵がずらりと駒を並べ、ローマ人を討ち取らんと浅瀬に踏み込んできていた。
 からくもこの窮地を脱しえたのはわずかに6,000。後方での惨劇を確認する術もなく、ただただ進むしかなかった。ひときわ高いところまで逃げつき足を止めるも、聞こえてくるのは怒号と武具のぶつかる鈍い音のみ。いまだ垂れ込める霧のせいで、勝利の女神がどちらに微笑んでいるのかその目で確かめることも出来なかった。
 ついにこの戦いの終焉は結実した。高く昇った太陽が降り注ぐ光が霧を払い、ついにすべてが衆目の元に姿を現す。山肌に、平地に、いたるところで哀れに屍をさらすローマの兵士。惨劇は、明らかにされた。
 ぐずぐずしていれば敵騎兵に見つかってしまう。ここまで逃げ延びた者はやむなく軍旗を掲げて最大速力で落ち延びていった。
 
 だがハンニバル麾下のマハルバル(*4)が配下の全騎兵を率いて、この敗残兵を追う。追撃は夜を徹した。これまでの惨劇に加え、更に食料欠乏という悪夢が敗残兵を襲い始める。翌日、彼らはやむなくマハルバルに降伏した。マハルバルは彼の名誉にかけて、武装解除と引き換えにその身柄を保護することを約した。ハンニバルもこの誓いに「カルタゴ人的な誠意」(*5)でもって応え、降伏兵には鎖を与えた。

 (*1)Ducarius。この節を見るに、インスブルス族のわりと有力者でしょうか。

 (*2)Insubrus。北伊に居住するガリア人の一つ。21-25にも出ていますが、ローマとは長年の仇敵。また、21-45を見るに、最初の戦いが行われたティチーノはこのインスブルス族の領土にあったのかも。
 
 (*3)フラミニウスは前回執政官をつとめた223年、北イタリアに出征しています。このとき相手にしたのが、このインスブルス族でした。そして貴族階級とゴタゴタあって本国召還くらった(21-63)のも、このとき。
 
 (*4)Maharbal。21-45参照。ハンニバル麾下の将校の一人で、主に騎兵を率いて戦った。ここでもやっぱり騎兵で活躍。
 
 (*5)約束を守らないこと。マハルバルの協約は無効にされ、投降兵は捕虜となった。
| livy | 22巻 | 20:34 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -









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