リウィウスを読もう!

ティトゥス・リウィウスの「ローマ建国以来の歴史」、
完全日本語訳がまだされていないこの史料を読もうという試みです。
自己中心的なことに、スタートは21巻からです。いつになることやら分からないけれど、エンドは30巻です。
要するに、第二次ポエニ戦争限定です。

*はじめてお越しの方は、「はじめに」をご覧ください。
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21-63
新執政官フラミニウス。任地アリミヌムへ発つ。
元老院とフラミニウスの不仲について。
フラミニウスに対する元老院の非難。
フラミニウス、任期第1日目に供儀を行うが失敗し、よからぬ前兆とみられる。
 新しく選出された執政官二人のうち、くじ引きによりプラケンティアで冬越し中の軍団を引き継ぐことになったのは、フラミニウス(*1)だった。フラミニウスは前年の執政官センプローニウスに書状を送り、「貴軍には3月15日(*2)アリミヌムにおいて集結されたし」と辞令を伝えた。
 
 フラミニウスはちょうど任期の始まる時に、任地に着任しておきたかった。これまで護民官時代や執政官時代に元老院があれこれ横槍を入れてきたことをフラミニウスは忘れていなかった。
 しかも、以前に行われた新規法案の可決でもフラミニウスは元老たちの反感を買っている。『元老院議員、および元老院議員を父に持つ者は、アンフォラ300個以上を詰める規模の船を所有してはならない』、それがこの法案の内容だ。これは護民官クイントゥス・クラウディウス(*3)が出した法律で、支持したのはフラミニウスだけだった。元老院議員の有する所領から生産物を運ぶには、これだけの大きさの船が必要だ。それを絶たれれば、輸送手段がなくなってしまう。このいさかいは貴族階級とフラミニウスの溝を決定的にしたが、逆に民衆の支持も増し、結果的に二度目の執政官を勝ち得るに至ったのだ。
 
 こういったいきさつがあったので、首都に留まっていれば元老院があれこれ口出ししてフラミニウスの活動を妨げようとするに決まってる。たとえばラテン祭(*4)の開催で出発の時期を遅らせられたり、他にも執政官としてせねばならない用事をわざと言いつけられたりしてくるに違いない。こう考えたフラミニウスは、旅行に出かけるフリを装って首都を出ると、さっさと任地へ向かった。
 それが元老院たちの知るところとなると、これまでにもフラミニウスには散々煮え湯を飲まされてきたが、それにもまして更に敵意が燃え盛った。
 
 「ガイウス・フラミニウスめ、あいつは我々元老院議員だけでなく、いまや神までもないがしろにしようとしている。やつが前に執政官にあったとき、あまりに不敬であるから我々はやつを戦場から召還したのだ。それをまだ懲りていないのか。執政官には慣例である宣誓も、任期第1日目のユピテル神殿参拝も、鼻で笑いながら跳ね除けて、首都を去っていった。元老院を軽視し、議員と議論しようとしない。やつは元老院への憎しみに満ち、元老院はやつへの憎しみに満ちている。ラテン祭の開催時期も決めず、アルバ山地で行うはずのユピテル・ラティアリス神への供儀(*5)も行おうとしない。
 本来であればきちんとユピテル神殿に詣でて、誓いを立て、神の加護を得た後、軍装を身にまとって警吏と共に任地へ発つのが正当なところだ。だがフラミニウスはこっそりと人目を盗み、執政官である証を身につけず、警吏たちも連れずに出て行った。これではまるで、陣営で働く下働きの卑人のようではないか。まるで故郷から追放を受けた罪人のようではないか。任期第一目を迎えるのにこのローマよりもアリミヌムのほうが執政官の権威にふさわしいとでも思っているのか? 我々を守護する神々の前で執政官の装束を身にまとうよりも、そのへんの公共宿屋で着替えるほうが威厳を得られるとでも思っているのか?」
 
 満場一致で、フラミニウスを呼び戻すことが決められた。強制的に神殿に参拝させた後、任地へやることにする。クイントゥス・テレンティウス(*6)とマルクス・アンティスティウス(*7)がこの命令を携えてフラミニウスを追った。だが、前回執政官だったときのように、フラミニウスはおとなしく従わず、この命令を拒否した。
 
 数日後、フラミニウスは任期を開始する。慣例どおりに犠牲を捧げていたが、その時、生贄の子牛が刃を受けて驚き、司祭の手を振り解いて逃げてしまった。見守っていた列席者たちは子牛がまきちらした血をモロに浴びてしまい。神殿は阿鼻叫喚に包まれた。少し離れたところにいる者からは、いったい何でそんなに騒いでいるのかが分からずに、ただこの騒ぎを面白おかしく見守っているだけだった。だがこれは、何かよからぬことの前兆だったに違いない。
 
 フラミニウスは前年度執政官センプローニウスから二個軍団、法務官ガイウス・アティリウス(*8)からも二個軍団を譲り受け、アペニン山脈を通ってエトルリアに向け、進軍を開始した。
 
 (*1)新執政官選出については、21-57参照。
 
 (*2)Idus Martiae。一年交替の政務官の任期は、毎年この日から始まるそうです。
 
 (*3)Quintus Claudius。平民階級。貴族の名門クラウディウス家とは違う人。この218年に護民官を務めた。後、208年のタレントゥム攻略時に法務官をつとめていたQuintus Claudius Flamenと同一人物かも??
 
 (*4)Feriae Latinae。王制時代にさかのぼる由緒正しい祭事。ラテン人とローマ人の友好を祝うもので、アルバ山地のユピテル・ラティアリス神に捧げ物をする。4日間行われるが、その開始時期については高位神官の任期開始日によるため一定ではない。かなり大事な儀式であり、執政官はその任期第1日目にこの開催日を決め、この祭事が終わってから戦地へ旅立つことになっていた。
 
 (*5)前述の通り、ラテン祭のこと。ユピテル・『ラティアリス』神とは、ラティウム地方の守護神としてのユピテル神に対する尊称。
 
 (*6)Quintus Terentius
 
 (*7)Marcus Antistius
 
 (*8)Gaius Atilius Serranus。21-62参照。62節を見るに、この時はローマにいたような感じを受けますが……。
| livy | 21巻 | 15:49 | comments(0) | - | - | -









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