リウィウスを読もう!

ティトゥス・リウィウスの「ローマ建国以来の歴史」、
完全日本語訳がまだされていないこの史料を読もうという試みです。
自己中心的なことに、スタートは21巻からです。いつになることやら分からないけれど、エンドは30巻です。
要するに、第二次ポエニ戦争限定です。

*はじめてお越しの方は、「はじめに」をご覧ください。
<< 21-57 | main | 21-59 >>
21-58
春いまだ浅い中、ハンニバル軍は厳寒のアペニン越えを決行する。
寒さが進軍を阻み、甚大な被害が出る。
 Victumviaeを落とした後、まだ寒さがかなり厳しかったので、全軍にわずかの間だけ休息が与えられた。
 イタリアでのはじめての春が芽吹こうとしている。その兆しいまだ定かでないうちに、ハンニバルは全軍を率いてエトルリアへと進軍した。エトルリア人もカルタゴ陣営に加えることを期していたのだ。自主的にか、それとも、強制的にか。ともかくエトルリアをカルタゴ側につけることが目的だった。
 
 だが、アペニン山地を越えようとしているハンニバル軍を強い嵐が襲った。アルプスの苦難をも凌ぐほどの勢いだった。
 強風が鋭い雨をうちつけてくる。雨をまともに顔面に受け、武器を握ることもできない。それでもなんとか進もうとすると強風に跳ね上げられて地面に激突する。これで兵士たちはすっかり恐れをなしてしまった。強い風ゆえに息が止まって、呼吸することもままならない。仕方ないので風に背を向けてしばし腰を下ろして、息を継ぐのだった。空には雷鳴が轟き渡り、その轟きの間を縫って稲妻が走る。聴覚も視覚も麻痺し、ただ恐れにさいなまれながら突っ立っているしかなかった。
 やがて雨はやんできたものの、風はさらに強くなった。その中で、その日の宿営地を設営せねばならなかった。だが、天幕の布を広げることもままならず、それを固定することも不可能だ。努力の甲斐か偶然か、やっと立った天幕もたちまちのうちに風がなぎ払っていく。しかも、風で巻き上げられた水分が山中の冷気で雹となり、一気に降り注いできた。兵士は何もかも放り出してあわてて顔を伏せ、天幕用の布を引っかぶった。
 時間が経つにつれて寒さは増してくる。身を起こそうにも全身の筋肉が凍り付いて、関節を動かすこともままならない。身体を小刻みに動かしてやっと四肢の自由を取り戻し、気力も戻ってきた。数箇所では焚き火の炎が燃え盛っている。自力で動けなくなった者は、仲間の助けを待っていた。
 
 ハンニバル軍はあたかも包囲を受けたかのように、二日間その地から動けなかった。結果的に、人も動物も、多くが死に至った。トレッビアの戦いを生き延びたわずか7頭の象も、この寒さで命を落としてしまった。

 (**)相当無謀な行軍です。この山行はリウィウスのフィクションだそうです。
| livy | 21巻 | 18:56 | comments(0) | - | - | -









   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< January 2020 >>

このページの先頭へ