リウィウスを読もう!

ティトゥス・リウィウスの「ローマ建国以来の歴史」、
完全日本語訳がまだされていないこの史料を読もうという試みです。
自己中心的なことに、スタートは21巻からです。いつになることやら分からないけれど、エンドは30巻です。
要するに、第二次ポエニ戦争限定です。

*はじめてお越しの方は、「はじめに」をご覧ください。
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21-56
トレッビアの戦い、終局。
離脱を図るローマ軍。
離脱に成功した者はプラケンティアにたどり着く。
ハンニバル軍は勝利の余韻に浸る余裕もなく、厳しさを増した寒さに耐える。
夜間、コルネリウスはひそかに陣を打ち払い、クレモナに至る。
 象はすっかり混乱しており、敵に当たるよりも味方を蹴散らしていた。ハンニバルはこの象部隊を戦線中央から離脱させ、敵左翼のガリア人同盟軍に向けさせた。象と対峙することになったガリア軍は、我先にと逃げ出した。この逃亡がローマ人たちに、更なる不安を喚起した。
 いまやローマ軍は敵に取り囲まれている。どこにも逃げ道はない。あるとすればただ一つ、眼前の敵その只中を強行突破するしかない。約10,000人が、アフリカ人とガリア人の混成部隊を突き破って、からくも敵戦線を突破しえた。戦場一帯は激しい雨にうちのめされている。川の水かさも増しており、もう一度渡って陣営に戻ることはできそうにない。おまけに雨は視界を遮り、いまだ戦っているはずの同胞の姿も見えなかった。やむなく、一路プラケンティアへと向かうことになった。
 離脱成功を見たローマ軍は、他の方向へも離脱口をはかろうと試みた。川に飛び込んだ者はその渦の只中へ姿を消し、飛び込むのをためらったものは背後から迫った敵の刃に倒れた。どうにかその場を逃げ延びたものは、先の一隊が通過した道をたどってプラケンティアまでたどり着くこともできた。敵の手にかかって死ぬか、もしくは川で溺れ死ぬか、二つに一つを迫られて後者を選んだものの中にはなんとか川を泳ぎきって対岸にたどり着き、元の宿営地にたどり着いた者もいた。
 
 雨はやがて、雪に変わりつつあった。厳しい寒さが敵も味方も包み込む。人も、動物も、象も、寒さのあまり命を失っていく。カルタゴ軍も、川を越えてまで敵の追討にあたることができなかった。寒さがあまりにひどくなっていたので、勝利をおさめたカルタゴ軍とはいえ、その勝利の喜びを享受することもできぬままだった。
 翌夜、ローマ軍宿営地の守備に残されていた兵と、そこに逃げ込んだ兵はひそかに陣を抜け出し、筏でトレッビア川を渡った。カルタゴ側の妨害はなかった。渦巻く水流の轟きで物音がかき消されていたからだ。またカルタゴ側も寒さと負傷で疲れ切っていて、とてもではないが追撃するだけの活力がなかった。
 こうしてコルネリウスは兵士と共にプラケンティアに至り、その地より再びポー川を渡ってクレモナ(*1)にたどり着いた。プラケンティアにはすでにセンプローニウス以下が入っており、これ以上の人員がその地で冬を越せば多大な負担をかけることになるからだった。


 (*1)Clemona。プラケンティアと同時期に建設されたローマの植民都市。
| livy | 21巻 | 18:50 | comments(0) | - | - | -









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