リウィウスを読もう!

ティトゥス・リウィウスの「ローマ建国以来の歴史」、
完全日本語訳がまだされていないこの史料を読もうという試みです。
自己中心的なことに、スタートは21巻からです。いつになることやら分からないけれど、エンドは30巻です。
要するに、第二次ポエニ戦争限定です。

*はじめてお越しの方は、「はじめに」をご覧ください。
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21-53
センプローニウス、コルネリウスを非難する。
コルネリウスを無視して戦闘準備にかかる。
その性急さが、ハンニバルにとっては好機となる。
 この勝利を誰よりも重視したのは、執政官センプローニウスだった。
 「見よ、我が同僚殿を打ち破った敵を、今度は私が破ってやったぞ。軍団の士気もこれで再び燃え盛っている。皆、一日も早く戦いたい気分でいっぱいなのさ、ただ一人、我が同僚殿を除いてな。
 コルネリウス殿は肉体よりも精神が参ってしまっておられるようだ。いざ武器をとることになれば、傷を受けた記憶が蘇る。それで彼は恐れおののいているのさ。
 誰があんな怪我人と共にみすみす衰えていくのを望むものか? こんな風に時を無為に過ごす理由がどこにある? ローマには三番目の執政官がいて、それが軍を率いてやってくるのを待っているというわけでもあるまい。
 敵はもうイタリアの地にあって、我らの喉元に刃を突きつけている。ここはシチリアでもサルデニアでもなく、スペインでもない。我ら父祖伝来の地、我らが生を受けたこの地なんだぞ。このままでは我らはこの地から追い払われてしまう。
 我が父祖はカルタゴの城壁まで迫ったこともあったはずだ。その子孫である我々が、あのカルタゴ人がアルプスからアペニンに至る全土の支配者となるのを、陣営の内に篭って震えながら見ているだけか? 執政官二人が揃って、しかも、執政官にふさわしい軍団をそれぞれ率いていながらだ! 父祖たちがこれを知ったら、どれほど嘆き悲しむことか!」
 センプローニウスは軍団司令部で、かの同僚のすぐそばで、このように熱弁を振るった。
 時はすでに、翌年の執政官選出が近づいている頃だった。このままぐずぐず決戦を先送りにしていれば、勝利の栄光は翌年の執政官のものとなってしまう。同僚が重傷の床にある今であれば、すべての栄光を彼の一手に掴むことも不可能ではなかった。ゆえにセンプローニウスはただちに決戦に向けて準備をさせた。コルネリウスの必死の説得には、まったく耳を貸さなかった。
 
 一方、ハンニバルの方はというと、いかなる戦術がこの敵には最適かを見極めようとしていた。
 当初は、まさか執政官ともあろうものが軽率でおろかな振る舞いはするまいと考えていた。ところが、報告を聞くにどうも執政官の片方が激情家で衝動的な性格をしているらしい。先ほどの戦いでその性急さがハンニバルの目にも明らかとなり、しかも目下、ますます増長している。
 今こそ、好機。これを逃してはならない。
 敵軍はまだ経験不足だし、手ごわい司令官は傷床に伏している。おまけに、傘下のガリア人は今のところやる気に満ちている。ガリア人は数こそ多いものの、その故郷から離れれば離れるほど、士気が下がって厭戦気分がこみ上げてくる。ハンニバルはこの特性をよく理解していた。
 もう一度センプローニウスを罠にかけてやろう。ハンニバルはそう考え、密偵にローマ軍の動向を探らせていた。ガリア人はカルタゴ軍だけではなく、ローマ軍にもいる。この状況を利用して、ハンニバルはガリア人を密偵として使っていた。そのうちの一人がローマ軍の動向をもたらす。戦闘準備進行中、と。これを受けてハンニバルも動いた。伏兵を潜ませ、罠をしかけるに足る場所を探させたのだ。
| livy | 21巻 | 18:06 | comments(0) | - | - | -









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