リウィウスを読もう!

ティトゥス・リウィウスの「ローマ建国以来の歴史」、
完全日本語訳がまだされていないこの史料を読もうという試みです。
自己中心的なことに、スタートは21巻からです。いつになることやら分からないけれど、エンドは30巻です。
要するに、第二次ポエニ戦争限定です。

*はじめてお越しの方は、「はじめに」をご覧ください。
<< 21-45 | main | 21-47 >>
21-46
ティチーノの戦い。
ローマ軍陣営における前兆。
両軍の陣立て。
戦闘開始。
ヌミディア騎兵が背後をつき、ローマ軍敗走。
執政官コルネリウスが負傷し、息子によって命を救われる。
一説によると、執政官を救ったのはリグリア人奴隷だという。
 一方ローマ軍側では、ハンニバル側のような機敏な動きがとれずにいた。おかしな出来事が続き、不吉な前兆を醸し出していたからだ。たとえば、一頭の狼が陣営に入ってきて出会うものをかみ殺し、狼自身はまったく傷を負わずに逃げていったこと。また、執政官の天幕の上に張り出した木の枝にハチが巣を作って群れをなしていたこと。
 執政官コルネリウスは、こうした予兆にしかるべき処置をした後、騎兵部隊と軽装槍兵部隊を率いて出陣し、敵陣に向けて行軍した。目的は、敵の至近距離に接近し、その陣容、その規模を見極めることにあった。
 ところがこのとき、ハンニバルもまた騎兵を率いて周辺の地勢を調べに出ていた。このハンニバルと、コルネリウスとは、偶然にも出くわしてしまったのだった。
 最初はお互い、敵の存在に気づかなかった。だがやがて彼方に見うる土煙はおびただしい人馬が巻き起こすものであり、すなわち、敵軍の存在を示唆しうるものだった。
 両軍はただちにその場で停止し、戦闘準備に入った。コルネリウスは前列に軽装槍兵とガリア人騎兵を配し、ローマ兵とガリア人以外の同盟市兵は後列に布陣した。ハンニバルは手綱を持つ騎兵(*1)を中央に、両翼にヌミディア騎兵を配した。
 鬨の声もあがらぬうちに、ローマ軍軽装槍兵は恐れをなして後列に逃げ込んでしまった。向き合うのはいまや、騎兵同士である。両軍騎兵はぶつかり合い、しばし互角の戦いぶりを見せた。だが、騎兵の騎乗する馬が入り混じっていた歩兵を見て混乱を来たし、下馬せざるをえなくなった。さらに、同胞が危機に瀕しているのを見た騎兵は馬から飛び降りて救援に駆けつけていく。騎兵同士の戦いであったものは、結局、歩兵同士の戦いに転じてしまった。
 一方、ハンニバル軍両翼に配されていたヌミディア騎兵は戦場に弧を描いて背面に回りこみ(*2)、ローマ軍を背面から衝いた。ローマ軍は、はっきりと動揺を示した。混乱の最中、執政官コルネリウスは負傷し、あわやその生命もかくやという危機に瀕した。そこへ飛び込んできた若い騎兵が一騎。この時いまだ少年、コルネリウスの息子だった。少年はその手で父の命を危機から救ったのだった。この少年こそ、後にこの戦いを終焉に導き、ハンニバルとカルタゴに対して栄光なる勝利をあげ、その功績ゆえに二つ名を冠されたアフリカヌスその人である(*3)。
 ヌミディア騎兵の攻撃で軽装槍兵は散り散りに逃げた。だが、残った騎兵は密集隊形を崩さず、その中心に負傷したコルネリウスを据え、武器のみによらずその身を呈して執政官を守りつつ、見事なまでの秩序をもってして、陣まで後退した。
 コエリウス(*4)の説によれば、コルネリウスを救ったのは息子ではなく、リグリア人の一奴隷だという。私としては、他の多くの著作の言を入れて、その功績をやはり彼の息子、後のアフリカヌスに帰したいと考えている。
 

 (*1)21-44にも出てきましたが、ヌミディア騎兵はほとんど裸馬であり、それと対比してその他の騎兵を「馬具のある騎兵」としているようです。
 
 (*2)ハンニバルお得意の戦術ですね。
 
 (*3)余計な解説は無用かとも思いますが、ハンニバル唯一のライバル、スキピオ・アフリカヌス初登場シーンです。ポリビウスもこのシーンを書いており、彼はどうやら、スキピオの親友ラエリウスから直接聞いたようですが……。当時ラエリウスは70代、ボケて、現実とウワサを混同していたかもしれない……。
 
 (*4)Coelius Antipater。ローマ人で法律家にして史家。グラックス兄弟と同時代人。第二次ポエニ戦争時代の歴史を書いており、リウィウスは随所でコエリウスを参照しているらしい。ただし、彼の著作はほとんど現存しない。一般的にポリビウスのほうがコエリウスよりも史実に基づいているとされています。いずれにせよ、この箇所が事実か否か、真相は歴史の闇の中……。
| livy | 21巻 | 09:24 | comments(0) | - | - | -









  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930   
<< September 2020 >>

このページの先頭へ