リウィウスを読もう!

ティトゥス・リウィウスの「ローマ建国以来の歴史」、
完全日本語訳がまだされていないこの史料を読もうという試みです。
自己中心的なことに、スタートは21巻からです。いつになることやら分からないけれど、エンドは30巻です。
要するに、第二次ポエニ戦争限定です。

*はじめてお越しの方は、「はじめに」をご覧ください。
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21-45
ローマ軍、ティチーノ川を渡る。
ハンニバル、マハルバルに周辺の略奪を命じる。
ローマ軍とハンニバル軍、接近する。
ハンニバル、兵士たちに報酬を約束し、神々を証人に立てる。
 両司令官の言葉で、両軍共に士気が高まった。

 ローマ軍はティチーノ川に橋をかけて、その防備のために砦(*1)も築いた。

 一方ハンニバル軍では、ローマがその建造に従事している間、マハルバル(*2)麾下500騎を出して周辺のローマ領を荒らしまわらせた。「ガリア人の領土には出来る限り手を出すな。ガリア人首領にはローマに対する蹶起を促せ」、ハンニバルはそう命じた。

 ローマ軍は橋を築き終えると、川を越えてインスブルス族の領土に侵攻し、Victumviae(*3)から8キロほど離れた場所に陣を打ち立てた。Victumviaeは、ハンニバルが陣を置いていた場所だ。戦闘は、もはやすぐ間際に迫っている。マハルバルもただちに呼び戻された。
 兵士への激励は言葉ではもう十分だと判断し、軍議の場では戦いに対する褒賞についてを明確にするだけに留めた。
 「イタリア、スペイン、アフリカ、どこでも構わない。好きな場所に土地をやろう。その土地の税は、子の代まで免除する。土地よりも現金を望むものには、かわりに銀で満足いくまで支払う。盟邦出身の者が望むならば、カルタゴ市民の座を与える。形ある褒賞よりもただ故郷に帰るものを望む者にも、その望みにこたえよう。故郷に帰った後には、同朋の誰もがうらやむような暮らしを約束する。主に忠実に従ってきた奴隷たちは、その隷属を解放してやろう。かわりに、主には別の奴隷を二人ずつ与える」(*4)
 この約定の証として、ハンニバルは左手に子羊を、右手に石を携え、ユピテル神(*5)をはじめとする神々に誓った。
 「神々よ、もし俺がこの約定を違えることがあれば、今ここで俺がこの羊を屠るが如く、わが身を屠れよ」
 祈りをささげたハンニバルは、手にした石で羊の頭を打ち砕いた(*6)。神々が証人となるのならば、約定は成就したも同然だ。後はただ、戦いさえすればその望みに手が届く。兵士たちの心は一つになり、声を一つにして、戦いを求めたのだった。


 (*1)英文を直訳で読むと、「橋の上に砦を一つ築いた」となっています。どんなものなのか、いまいちよく分かりません…。横でもそばでもなく、『上』。しかも『一つ』。川を渡った向こう側の端に、橋をまたぐようにして要塞を築いているのを想像しましたが(←ハウステンボスにこんな感じのがあった)
 
 (*2)マハルバル。21-12参照。ヒミルコの息子で、サグントゥム攻略時にハンニバルにかわって指揮を執っている。ハンニバルに最も信頼されていた将帥の一人。
 
 (*3)Victumviae。どこなのか分かりませんでした…。
 
 (*4)ものすごく大それた報酬を約束しているような気がします。土地の分配って、一将軍が勝手に行ってよいものなんでしょうか。自分が征服したスペイン、イタリアはともかく、アフリカまで…。バルカ一門はカルタゴにおいて、そこまでの権力を誇っていたのでしょうか。ハンノあたり対抗勢力が反対しそうな気がするのですが。

 (*5)ユピテル神。21-22参照。ハンニバルは「ユピテル神の使者に導かれる」夢を見ています。また、ガデスに行ったときにはヘラクレス神殿も詣でてます(21-21参照)。この人、意外に信心深いんじゃあ……。リウィウスは「神を信じない男だ」(21-4)と言っていますが。

 (*6)著者がローマ人なので当たり前ですが、この儀式はローマの慣習にあるものだそうです。ここで興味深いのは、この儀式に際してこの『石』がユピテルの雷に擬されているところです。ハンニバルの家門「バルカ」はカルタゴ語で「雷光」の意。なかなかおもしろい符号ですね……と、最近読んだ本「Cannae」に書いてありました。
| livy | 21巻 | 17:41 | comments(0) | - | - | -









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