リウィウスを読もう!

ティトゥス・リウィウスの「ローマ建国以来の歴史」、
完全日本語訳がまだされていないこの史料を読もうという試みです。
自己中心的なことに、スタートは21巻からです。いつになることやら分からないけれど、エンドは30巻です。
要するに、第二次ポエニ戦争限定です。

*はじめてお越しの方は、「はじめに」をご覧ください。
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21-44
ハンニバルの演説、続き。
 「我が軍は一人の例外もなく全員が勇気と才気に満ち溢れている。長年の戦闘経験を持つ歩兵たちよ。勇敢な部族から集ってくれた騎兵たち、馬具をつける者もつけぬ者(*1)も、みなわが忠実な友軍だ。そしてお前たち、カルタゴ人。我らが祖国のため、そして我らが受けた屈辱を晴らすために、剣を取り立ち上がった。
 この戦い、先に手を出したのは我らの側だ。攻撃にまわる側のほうが、守勢に陥る側に比べて、勇敢さの点で勝る。我らはイタリアに踏み込み、敵を凌駕する苛烈さで戦いを仕掛けんとしている。
 辛苦、負傷、そして、蒙った侮辱。それらが我らの闘争心を掻き立てる。やつらはサグントゥム包囲の咎を俺に課し、お前たちの司令官であるこの俺の身柄を引き渡すように要求してきた(*2)。次いで要求はお前たち全員の投降にエスカレートした。もしもその要求に屈していたら、やつらは我らに厳しい拷問を課したことだろう。
 ローマ、それは、この世界でもっとも残酷で、もっとも傲慢な国だ。やつらはすべてが自分の意のままに動くと思っている。我々の戦い、我々の平和、それを裁定するのが当然の権利だと思っている。山河を国境と規定し、我らを締め出し、越境は禁止し、さらに、その境界を狭めてくる。『エブロ川を越えるな』、『サグントゥムに手を出すな』、だがサグントゥムはエブロ川のこちら側にあるぞ? 『では、どこにも動くな』と来る。シチリアとサルディニアは我がカルタゴ父祖伝来の土地だったが、それをローマが奪うのが果たして些細なことだと思えるか? やつらは次はスペインも奪おうとするだろう。次は? やつらは必ずや、アフリカ本国へやってくる。すでに今年、ローマの執政官のうち一人はスペインへ(*3)、もう一人はアフリカに(*4)派遣された。
 我々は、もはや武力に訴えるしかないのだ。臆病で卑怯な者は、真実から目をそむけるだけだ。誰に妨げられることもない安全な方法をとっていれば、祖国と領土は保全されると。だがそれはまやかしだ。今こそ我らが勇気を見せるときだ。
 勝利か、死か。もはや避けられない運命は、その二択を我らに提した。敵に背を向けるな。勝利をこの手に掴むか、さもなくば、幸運の女神が我らを見放したとき、我らは死を迎える。このことを決して忘れるな。常にこの意識を持ってさえいれば、お前たちはもう、勝利をその心に掴んでいる。勝利の暁には、かつてどの英雄も手にした事のないほどの褒賞が、不死の神々より我らに与えられるだろう」


 (*1)ヌミディア騎兵は馬具をほとんど着けない裸馬に乗っていたそうです。ですので、「馬具をつけない者」はヌミディア騎兵、「馬具をつける者」はスペイン騎兵やリビア騎兵たちを指すのだと思います。
 
 (*2)21-6参照。ローマの使節がハンニバルの身柄引き渡しを要求している。
 
 (*3)執政官コルネリウス。任地スペインに赴く途中のマルセイユ付近でハンニバルの動向を知り、本国へ取って返している。スペインにはかわりに、兄弟のグナエウスが行った。21-17,21-32参照。
 
 (*4)執政官センプローニウス。本来の任地はシチリアだが、情勢如何ではそこからアフリカへの侵攻が期されていた。21-17参照。
| livy | 21巻 | 14:05 | comments(0) | - | - | -









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